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bees

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今度の家のそばの図書館はとても小さいので、
読みたいと思った本が見つかる確率はほぼ0パーセント。
でも、それにもメリットがある。

あまりに小さいために、
手のひらに載せて持ちはこべることだ・・・・・って、そんなわけない。
そうではなく、あまりに小さいので、いつもなら読もうと思わないような本も目に入ってくることだ。

この本もそういう成り行きで読んだ本だった。


ハチはなぜ大量死したのか ローワン・ジェイコブセン著 (文春文庫) 

途中で飽きるだろうと思って読みはじめたら、
面白くてどんどん読でしまった。

数年前から騒がれているハチの失踪事件。
これを蜂崩壊症候群(Colony Collapse Disorder=CCD)というらしいけど、
2007年春までに北半球から4分の1のハチが消えたそうだ。
死骸も残さずに。

著者はその犯人さがしにとりかかる。
あやしいと思われたのは、
電磁派、ウィルス、ダニ、農薬(ネオニコチノイド)、栄養不足、都市化、温暖化など。
しかしひとつずつ検証していくと、
どれもそれだけですべてのハチの失踪を説明できる原因とはいえない。
いちばん大きな原因と考えられるネオニコチノイドでさえ、
それがすべてのハチにCCDをもたらすわけではない。

何百ページ分を一気に飛びこえて結論に行くと、
著者の考えでは、
上のようないろいろな要素が複雑にからみあって、
CCDが起こるのだろうということになる。

推理小説のように単純明快な答えを期待して読んだ人は、
拍子抜けするかもしれないけど、
わたしはとても納得した。

CCDになっていないハチでも、
その多くが驚くほど多種類のウィルスに冒されているという。
また、健康なハチの体には善玉菌がいて免疫を担っているのだけれど、
それが多くのハチで非常に減少している。

つまり現代のハチは免疫が低下しているのだ。
その理由は不自然でストレスの多い生活。
といってもハチが不自然な生活を選んだわけじゃない。
ハチを飼う人間が人間の都合で不自然な生活を押しつけたのだ。

病原菌の繁殖を予防するには抗生剤が使われる。
ハチに壊滅的なダメージを与えるミツバチヘギイタダニに対しては、
強力な殺ダニ剤が使われる。
広大なアーモンド畑の受粉に雇われたハチは、
毎日アーモンドの蜜と花粉だけ食べることになる。
これ自体がとても不自然な食事だが、
それ以上に不自然なのは、
アーモンドの開花時期に合わせて状態を調整するため、
コーンシロップが与えられること。
そして栄養失調のハチに対しては、
ミツバチ用タンパク質サプリメントが与えられる。
受粉のために遠くまでトラックで運ばれることも、
ハチにとってはかなりのストレスだろう。

こんなふうにして免疫が落ちたハチが、
ミツバチヘチイタダニに攻撃されれば、一気に死滅するし、
ネオニコチオイドを含んだ花の蜜を吸えば、簡単に痴呆状態になる。

なんだか現代の人間にそっくりだ。
体を弱めるような不自然なことをしておいて、
病気になると薬でごまかし、
ますます不自然になって免疫が下がり、病気になる。
それをまた不自然な方法でごまかす。
これを続けているうちに、
ほんのささいなストレスで倒れるほど弱ってしまう。
多くの人はそのストレスを悪者扱いするけれど、
本当の問題は、それに負けるほど弱ってしまった体だ。

これはハチのはなしではなかったのだ。

でもハチのはなしもとても面白い。
ハチの生態については初めて読んだけれど、
ハチは巣全体でひとつの生き物のように作動しているようだ。
だれに命令されるでもなく見事にオーガナイズされた組織行動は、
神業としか言いようがない。
そしてハチがいなければ、
多くの農作物や果実が実らないことも、よくわかった。

後半に、ある養蜂家のことが書かれていた。
この人は1998年にミツバチヘギイタダニと闘うのをやめた。
他の養蜂家たちがこのダニにやられて戦々恐々としているときに、
彼は「ダニから何か学べるものがないか、様子を見ることにした」
つまり殺ダニ剤を使うのをやめてじっと待ったのだ。
貧乏生活に耐えて。

「ダニは敵ではない。ダニは問題解決のために自分を助けて
くれているのだ。問題は、脆弱なミツバチにある」
と悟ったらしい。

そしてミツバチヘギイタダニに負けずに残ったわずかなハチを、
育てはじめた。
交配を重ねるにつれ、新しい世代は抵抗力を高めていった。

「私たちは生物の集団的消滅を災厄とみなしがちだが、
これは問題を修正する自然の方法であることがある」

「自分や同僚の養蜂家が抱えている問題が、
人間のテクノロジーに端を発しているなら、
喜んで自分の支配権を放棄し、
蜂たちに自らの養蜂場の発展を導かせたいと思った。
蜂の付き人となって、蜂から指示を受けようと」

「私たちが自然のすべてを理解することは決してないだろう。
けれども、自然の慈悲深い心配りと庇護のもとで暮らし働くすべを
学ぶことはできる。かつては多くの人がそうしてきた。
今も将来も、私たちに同じことができないという理由はない」

と、この養蜂家カーク・ウェブスターさんは言っている。
養蜂家版の木村秋則さんだな。

そうそう、最後のほうに、花について面白いことがたくさん書いてあったんだけど、
返却期限を過ぎて図書館から催促されたので、
読めなかった。
また借りてこよう。
買ってもいいし。


以下はネオニコチノイドについて

新農薬ネオニコチノイドが脅かすハチ・生態系・人間
ネオニコチノイド系農薬とは何か(上)
ネオニコチノイド系農薬とは何か(下)


EU15カ国は2013年12月1日から2年間、
ネオニコチノイド系の農薬の使用を禁止することになりそうな状況らしい。






※ホメオパシー講座やります。
  お題は 「予防接種と子供のかかる病気」
  http://homeopa.info/lecture3.html
by homeopa | 2013-05-24 23:04 | 自然のちから