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母の手

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この手で家族のいろいろな衣類を縫ってくれました。

あまり裕福な家ではなかったので、
生地を大量に安く買ってきて、
三人の娘におなじ生地でそれぞれ少しかたちの違うワンピースをつくってくれたり。




でもお向かいのインテリの奥さんに、
「子供はひとりひとり個性があるのだから、同じ服を着せるのはよくない」
とかいわれて、顔から火をふいて怒っていました。
なんでそこまで怒るのかと、当時は思って見ていましたが、
今はその気持ちがよくわかります。

7人家族の下着のパンツもすべて、
母の手づくりでした。

いまどきの手づくりは、かわいいイメージがありますが、
母のつくったパンツは、生成りの木綿地。
というと聞こえはいいいけど、
わら半紙みたいな色で分厚くてごわごわしていました。
これもまとめて安く買ってきたものと思われます。

しかもゴムはウェスト部分だけに入っていて、
脚が出るところは何も入っていないので、
ガポガポして風とおしがとてもよい。
祖父が風呂あがりにパンツいっちょうでふらふらしていると、
ガポガポの脚の出口から一物が丸見えだったのを覚えています。

でも私はそれがパンツというものだと思っていました。

小学校に入って最初のプールの時間に、
クラスメートたちが着ている真っ白なメリヤス地のパンツを見たときの衝撃は、
今も忘れられません。
パンツって、白いんだ。
パンツって、やわらかいんだ。
パンツって、お尻にフィットするんだ。
パンツって、字が書いてないんだ。。。。

7人家族がみんな同じパンツをはいていたので、
それぞれのパンツを区別するために、
母はパンツの前部の右上の部分に各人の名前の最初の文字を、
墨で書いていたのです。
悦子なら「え」、鹿之助なら「し」、フジなら「ふ」と。
それも直径4センチほどの大きさで。

なんとなく自分は世のみんなとは違う、という私のコンプレックスは、
いろいろな事情からできあがったとは思いますが、
このパンツなんかも大きな要因ではなかったかと思います。

なにはともあれ、あんなに裁縫が得意だった母も、
10年ほど前から目が悪くなって、
縫い物はほとんどできなくなりました。

でもむかしとった杵柄というのは頑丈らしく、
ボケてからは、ときどき裁縫への衝動が頭をもたげるのか、
「すそが長すぎるからつめようかね」なんていって、
自分の着ているブラウスのすそをジョキジョキ切りはじめたりします。
でもすそ上げを完了させるほどの根気はないので、
実家には、すそや袖口をちょん切られた服がたくさん積みあげられています。


※ホメオパシーや健康の話題については、私のホームページのほうもごらんください。
http://homeopa.info
by homeopa | 2009-07-19 07:20 | 人間