pimboke6

what a day!

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生まれて初めて味噌を仕込んだ。

とにかく最初だから、何もわからないので、
生協で売っていた大豆と麹のセットを買った。
分量もすべてあちら任せ。

届いたら、作り方を書いた紙が入っていて、いとも簡単に見えた。
さっそくウキウキしながら豆を水に浸けた。

しかし翌朝、起きてみたら、
豆がこんなことになっていた。

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乾燥した豆は水にひたすと膨らむ、
という万国共通普遍の真理が、なぜか頭から漏れていた。
いや、たとえ頭にあったとしても、
うちにある最大の鍋がこれだから、
ほかにどうできただろう?
あ、ふたつの鍋に分散することもできたわね。

でも、この時点でふたつの鍋に分けてみたけれど、それでも鍋にいっぱい。

この段階で、もうやめたくなった。
でも豆は水につかってしまっている。
やるしかない。

そこで大きな鍋を買いにいくことにした。
この近所では、こういう金物はホームセンターにしかなくて、
ホームセンターは自転車でしか行けないような場所にある。
自転車の鍵をもって、マンションの駐輪場に下りた。

ない。
自転車がない。

たいていの人は、「あ、盗まれた」 と思うだろう。
わたしは、「ああ、ここまで衰えたか」 と思った。

以前に、自転車で遠くまで出かけて、
近くまで帰ってきたところでお店に入り、用事を済ませ、
そのまま自転車を置いて帰宅し、3日ほど気づかなかったということがあった。
そのときも手元に鍵だけあって、自転車がなかった。

それを二度までも繰りかえすほど脳が衰えたのかと思ったのだ。

とにかくご近所を探すことにした。
自転車を置いて帰るとしたら、そんなに遠くであるはずはない。
スーパーの前、コンビニの前、郵便局の前、写真屋さんの前、カフェの前、別のスーパーの駐輪場。
ない、ない、ない。

と思ってかなりみじめな形相で通りを歩いていたら、
左側の店の入り口のマットの上で何か黒い物体が動き、さっとわたしに走りよってきた。

黒い物体はわたしの横をかすめて右側にまわり、
そこでくるりと向きを変え、
ギャッ! みたいな声をあげて、わたしのジーンズの脚に飛びついた。
わたしが同様にギャッ! と叫んで飛びあがると、
黒い物体は跳ねかえされて地面に着地し、
もう一度ギャッ! と叫んで飛びついてきた。
わたしはもう一度ギャッ! と叫んで飛びあがり、
とうとう物体は退却して、左側の路肩に身をすくめ、じっとわたしをにらみつけた。

もちろん、わたしはそそくさとその場を離れたが、
いつ後ろから飛びかかられるかと気が気でなかった。

体長20センチの黒いネズミに襲われたショックにくらべたら、
自転車が消えたショックなど屁でもない。

自転車はすっぱりあきらめ、
長いあいだ乗られていなかったガガのスポーツタイプの自転車を出してきて、
さびついたチェーンをガリガリ鳴らしながらホームセンターに向かった。

そのあいだ頻繁に頭に浮かんでくる思いは、
「なんで、わたしに? わたしの何がヤツを引きよせたの?」
というものだったが、
あまり深く考えると、同種の法則やら、エネルギーの共鳴やらを考えだして、
ろくなところに行き着かないような気がしたので、
ぐっとその疑問を抑圧した。

帰宅してさっそく大鍋に大豆を移し、
煮はじめた。
この時点でたぶん普通の日の二日分ぐらいのエネルギーを使いはたしていたはずだ。
(でもホームセンターのレジのお姉さんが間違えて鍋の値段を500円少なく打ったので、少し元気が戻った)

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説明書には、「指でつぶれる柔らかさになるまで煮る」 とだけ書いてある。
何時間ぐらいかかるのだろうと、
息も絶え絶えになりながらパソコンの電源を入れ、ググってみた。

だいたい6~7時間、と書いてある。
ひえ~~~!

そもそも味噌をつくろうと思ったのは、
今年の抱負が 「買うよりつくる」 だったからでもあるが、
同時に、家計にあまり負担をかけずに健康的でおいしい食生活を楽しみたいという思いもあったからだ。

この冬、ガガはガスファンヒーターを1日30分ぐらい使ったけれど、
わたしはついにガスファンヒーターを押し入れから出さずに過ごした。
それぐらいがんばってガス代を節約したのに、
6~7時間も豆を煮ることになるなんて。

でもここまで来たらもう引きかえせない。
差し水をしながらひたすら煮つづけて午後8時。
指でつぶせる柔らかさになったので、
いそいそとつぶしにかかった。

恨み言を言うつもりはないけれど、
大豆に付いてきた説明書にも、
参考にした数々のブログにも、
ゆでた大豆をつぶすのが、力と根気と健気な性格を必要とするしんどい作業であることは、
ひと言も書かれていなかった。

すり鉢と、すりこきと、マッシャーと、フォークを取っ替えひっかえして、
汗をたらし、唾を散らし、鼻水をすすり、ふけをばらまきながら、
奮闘すること2時間。

塩とまぜてあった麹をそこにまぜるわけだが、
つぶした大豆は大きな鍋の九分目ぐらいまであるので、
かき混ぜるのも容易ではない。
再び汗と唾とふけと鼻水を散らしながら、
まぜること30分。

味噌玉をつくってプラスチックの桶にたたきつけたところで、
少しだけ、ほんの少しだけ、
その日のパニックとショックと恐怖と抑圧と恨みと失望がむくわれた気がした。

こんな気持ちで仕込まれた味噌の菌類が、
どんなふうに育ってくれるのか、
楽しみなような、怖いような。

あとでガガにネズミの話をしたら、
鼻血が出そうなぐらい笑われて、
「ちょっとごめん、ラインでみんなに知らせてくる」
と言われた。

友だちに話したら、
動物が登場するときは、何かのメッセージがあるはずだと言われた。
そして大豆をつぶすには、ビニール袋に入れて足で踏むのがいちばんとも言われた。

草の畑のおじさんに話したら、
きっとネズミは何かを見たのだろうと言われた。
怖い・・・・・

何はともあれ、もし味噌をつくるのがこんなに大変だと知っていたら、
そして味噌をつくろうとすると自転車が消えてネズミが襲ってくると知っていたら、
味噌をつくろうとは思わなかったかもしれない。
だから知らなくてよかったのだろう。

その晩、
水でふやけた大豆が部屋いっぱいに膨らみ、
窒息しかけたわたしのお尻をネズミがかじる夢を見た。

というのはウソ。

疲れ切って、夢も見ずにこんこんと眠った。







※足指歩き。
やってみたら、けっこう強力。いろなところが活性化する感じがする。

by homeopa | 2014-02-03 21:27 | わからないこと